北海道にはテレビ局が6つあり、夕方のワイドショーは各社でしのぎを削っています。
業界用語では、「札幌戦争」と呼ばれるほどであり、各社は力を入れているそうです。
中でもすごいのが、主役のSTVの『どさんこワイド』を中心に、ライバルのHTBの『イチオシ!!』、HBCの『今日ドキッ!』がバチバチに番組を作っています。
では、各局のニュースは何が違うのでしょうか?
私も道産子ですが、小さい頃からSTVの『どさんこワイド』ばかり見てきたので、他のテレビ局の特徴がわかっていません!
神奈川県に居た時は、『水曜どうでしょう』の影響で、HTBが北海道で一番有名なテレビ局だと思ってました。
でも、北海道に住み始めて、夕方の番組はSTVの『どさんこワイド』が視聴率トップですごいと驚かされました!
そこで今回は、STVとHTBが同じニュースネタを扱っていたので、比較をしてみました。
「札幌の東急百貨店でガシャポンコーナーがオープする」というネタをどのように報道しているのでしょうか?
比較してみると、STVが女性向け、HTBが男性向けだったりと、思わぬ発見がたくさんありました。
HTBの『イチオシ!!』のニュースの作り方
最初はHTBの『イチオシ!!』です。
HTBは『水曜どうでしょう』でお馴染みのテレビ局。世代によっては、全国のローカル局で一番の知名度を誇っていると思います。
しかし、夕方のニュース番組では、STVの『どさんこワイド』に視聴率で勝てず、後ろを追っています。
どこに違いがあるのでしょうか?
HTBのニュース構成
【※】作中のスクリーンショットはYouTubeから引用をさせていただきました。
HTBの現場取材は女性アナウンサー。ナレーションは男性アナウンサーです。
現場に女性の森唯菜アナウンサーが行く構成になっています。
HTBのニュースは、冒頭に「何やら巨大なガシャポンコーナーがある」と、女性アナウンサーが紹介します。
開始早々に、「東急百貨店に2024年3月8日からガチャポンのお店がオープンします」と新店舗の開店情報を宣言。
続いて、コーナーの名前と、設置台数は1,140台を情報を付け加えます。
HTBのニュースは情報量が多いイメージです。
次にテナントの責任者が出てきて、「なぜ札幌のデパートにガチャポンテナントを出そうと思ったのか?」という理由を話しました。
HTBは、「なぜ、出店者がデパートに巨大なガシャポンコーナーを出そうと思ったのか?」という出店理由に迫ります。
テナント責任者の後に出てきたのが、HTBのアナウンサーです。
女性アナウンサーが出てきて、ガチャポンを楽しんでいきます。
ガチャポンは1回300円など、HTBはテロップで細かい情報を映してくれて親切です。
また、アナウンサーさんが張り切っているのも特徴です。
「私の欲しいプリンが1回で取れました!」
とカメラでにこやかに笑っています。
HTBはさらに、「置いてあるガチャポンの商品はこんなものがありますよ」と全体像を見せながら、平均的な価格は300〜400円という値段で紹介していました。
店内の情報を細かく教えてくれるのが、HTBのニュースの特徴です。
さらに、プレミアムガチャポンもあり、1,500〜2,000円という紹介をしています。
スマートフォンでスクショするのにも便利な画面の作りですね。
1回やってみて、女性アナウンサーが楽しそうに組み立てていたのが印象的でした。
このニュースでは、森唯菜アナウンサーを全面に押し出していました。
最後に、もう一度テナント責任者のインタビューを映し、「我々がなぜ札幌の東急百貨店に出店したのか?」という理由を強調するHTB。
・開店したお店側に、「なぜここに出店したのか?」という視点で取材をするテレビ局
・男性アナウンサーがナレーションをする落ち着いた語り口調
・女性アナウンサーが楽しそうに振る舞う現地リポート
HTBのニュースを分析をしてみると、札幌の経済ニュースと言っていい報道の切り口でした。
STVの『どさんこワイド』のニュースの作り方
次はSTVの『どさんこワイド』です。
STVの『どさんこワイド』は、1991年から続く大長寿番組!北海道では誰もが知るお化け番組であり、2023年の年間視聴率で3冠を達成しているそうです。
北海道のスーパー銭湯に行くとテレビで『どさんこワイド』が付けられていたり、北海道の主婦は夕方から『どさんこワイド』を付けっぱなしにしながら、家事をしている人もたくさんいます。
「(奥さま)お絵描きですよ」や「30秒PR」は、視聴者が参加して現金を獲得したり、お店や商品、公演のPRなどをできる視聴者参加が特徴です。
STVのニュースはどこに特徴があるのでしょうか?
STVのニュース構成
STVの現場取材は男性記者。ナレーションは女性アナウンサーです。
現場に男性の根本翔記者が行く構成になっています。
STVは現場に報道部の記者が行きます。あえて記者という目立たない人が現場に取材に行ってました。
STVのニュースは、冒頭でエスカレーターに乗りながら、「東急百貨店の9階すぐ横に道内最大級のガシャポンコーナーが誕生しました」と、男性記者が紹介します。
「東急百貨店の9階すぐ横にありますよ!」と場所を紹介しながら、道内最大級という文字で気を引く作りです。
でも、冒頭では「オープン日を伏せたまま」なのが、STVニュースの特徴です。
STVは場所を紹介すると、さっそく記者がガシャポンを試すシーンが入ります。
1回目は欲しい商品が手に入らず、「欲しい商品が手に入りませんでした」というガシャポンあるあるのコメントをしました。
記事にすると分かりづらいですが、記者さんはあまりしゃべらず、女性のアナウンサーが解説をしていきます。
動画で見ると、明るいBGMと女性の声があり、楽しい雰囲気でニュースが進行していきます。
欲しいガシャポンが当たらなかったので、「どうしても動物が欲しいので、もう一度チャレンジしてみます」と宣言する記者。
ここでもガシャポンあるあるを出し、「あー、よくある光景だよね」という演出をSTVニュースは紹介します。
2回目でめでたく柴犬を引き当てた記者。
HTBのニュースは、女性アナウンサーが喜ぶシーンが長かったです。
でも、STVニュースは男性記者のガシャポンのシーンをサクッと終わらせます。
STVが大きく違う点は、オープン前に気になっていた周囲の人々にインタビューをする点です。
道民がこのコーナーにどのように興味を持っているか?をインタビューするのが、このニュースのSTVの特徴ですね。
複数の女子高生にインタビューをして、「北海道の人がガシャポンに興味を持っていて、行ってみたいと思っている」ことの取材していました。
STVのニュースは、視聴者視点を大事にしていると思わされました。
途中でグラフも入れて、ガシャポン(カプセルトイ)市場が広がっていることを視覚で表示してくれます。
パッとグラフで表してくれるので、STVはわかりやすいです。
数字よりも、色とグラフの動きで「急に増えてる!」ことがわかります。
HTBは数字やお店の名前などの情報を詳しく説明します。
でも、STVは「だいたいこんな感じなんですよ」という状況を紹介するのが大きな違いですね。
プレミアムガシャポンコーナーも紹介するのですが、STVは一番高い2,000円のみを紹介します。
あえて1,500円のプレミアムガシャポンを紹介せず、一番高い2,000円のガシャポンのみを紹介するのがSTV流です。
男性報道記者がガシャポンを回しますが、二言くらいしかコメントせず、女性アナウンサーのナレーションがメインです。
一番高いガシャポンを紹介して、「こんなふうに精巧な作りになっていますよ!」と組み立てて見せてくれます。
でも、HTBの女性アナウンサーと比べて、記者の反応は非常にあっさりしていました。
最後に、STVはテナントの責任者のインタビューを入れます。
コメントも、「この売り場に誰が来てほしいか?」というコメントでした。
STVは最初から最後まで視聴者目線です。
インタビューも、お店やデパートの考えを入れず、「視聴者(北海道の人)にどう楽しんでもらいたいか?」という視点で切り取っています。
最後の最後に「あす(2024年3月8日)午前10時オープン」というオープン日時を入れて、開店日と時間を最後に明かしました。
最初にオープン日時を表示したHTBと、最後にオープン日時を表示するSTV。まったく情報の伝え方が違いますね!
・街頭インタビューをして、「街の人がどのようにガシャポンと新店に興味を持っているか?」という視点で取材をするテレビ局
・男性記者の動きと感想が必要最低限の現地リポート
・女性アナウンサーが楽しそうにナレーションをする口調
STVのニュースを分析をしてみると、北海道の視聴者(特に主婦など)目線の切り口と言っていい報道の切り口でした。
STVのどさんこワイドニュースのすごいところ4選
1. 徹底的なお客さん目線
まずは、徹底的なお客さん目線です。
『どさんこワイド』は地域密着だと言いますが、ニュースの作りも「北海道に住んでいる人がニュースを見て、行きたくなるような作り」を心がけていました。
男性記者が現場で必要最低限の解説し、女性アナウンサーのナレーションと明るいBGMで、楽しそうに紹介します。
「お店側がどのような意図でオープンしたのか?」という店舗側のインタビューもバッサリと切り落とし、女子高生が行きたがっているなどの街の人の意見を取材しているのが、STVの特徴です。
さすが地元密着のどさんこワイドです!
動画作りでは、音が動画の完成度の半分(50%)を占めると言われています。
絵で見ると地味だけど、動画で見るとSTVのどさんこワイドニュースは楽しいんですよね。
お店側の視点もいいんですけど、私は地元の人がどう思っているのか?が気になります。
2. 女性目線の絵作り
次に、女性目線の絵作りです。女性は男性に比べて感性や直感で判断して、地図を見るのが苦手と言われています。
STVのニュースは、冒頭からエスカレーターに乗って、「札幌の東急百貨店9階の左側に新しいコーナーが誕生しました」と場所を紹介していました。
HTBの場合は、いきなり東急百貨店の9階のフロアを映して、その後に外観を紹介します。
男性は地図を読むのが得意な人が多く、東急百貨店の9階と言われたら、行くことができる人も多いでしょう。
私はわかりません。すぐに道に迷っちゃいます。
確かに東急百貨店の外観を映されても、お店の場所はわからないもんね。
そうそう!札幌の東急百貨店の場所はわかっているんです!でも、9階のどこにあるかがわからないんです!
でも、STVの紹介方法なら、エスカレーターに乗って9階に行けばいいのを映像で教えてくれるので、方向音痴な私にもわかります。
夕方の『どさんこワイド』のメインの視聴者は、家事をしながら見ている主婦や高齢者が多いと思われます。
視聴者向け(特に主婦)の紹介を徹底しているのが、どさんこワイドのニュースなのではないか?と感じました。
3. 情報の取捨選択
STVのニュースは、情報を絞っています。
ガシャポンコーナーの値段は300円と2,000円の商品しか紹介しません。
一方で、HTBのニュースは情報を盛り込んでおり、テロップで見せるのが特徴的です。
どちらもいいのですが、HTBは新聞的に情報を盛り込むので、情報を伝えるのが目的なんだろうと思いました。
男性が見ていて好きそうな絵作りですね。
STVは、バッサリと情報を切っていますね。
私は平均的な値段の300円と一番高い2,000円でも行きたい気分になりますね。
家事をしながら見るので、主婦の私的にはSTVくらいの情報量でも見やすいです。
STVのニュースを見ると、あくまで「行きたくなる情報」に絞っています。
ながら見でも大丈夫な作りになっているのが、STVの興味深いところですね。
4. 最後に重要な情報を伝える
STVのニュースの大きな特徴は、最後に重要な情報を伝えることです。
このニュースでは、最後の最後に「あす午前10時 オープン」という情報を伝えていました。
HTBのニュースは逆です。
ニュースの冒頭に、「東急百貨店にカプセルトイ専門店がオープン」というニュースを入れています。
両局とも右上のテロップで、「あす誕生」「あすオープン」は伝えているのですが、オープンの時間と強調の方法が違いますね。
HTBは最初にオープン日時を伝えて、最後にテナントの責任者の言葉で締めています。
重要なことを冒頭に言う「論理的」な作りで、男性的なニュース構成といってもいいかもしれません。
STVは最後にオープン日時を伝えますね。
ニュースの途中から見ても、最後にオープン日時を強調されるので、主婦が家事の手を止めて見てもわかるようになっています。
なるほど!ここでも、どさんこワイドは徹底的に視聴者目線なんですね。
結論 どさんこワイドはテレビをつけている主婦や高齢者目線を徹底!
項目 | STV | HTB |
---|---|---|
ナレーション | 女性 | 男性 |
現場の人 | 男性記者 | 女性アナウンサー |
街頭インタビュー | あり | なし |
情報 | 少ない | 多い |
新店開店日時 | 最後 | 冒頭 |
視点 | お客さん | お店目線 |
比べてみると、HTBはお店目線でビジネスマン男性が喜びそうなそうなニュース作りをしていました。
お店側は、HTBに取材されたほうが自分達の考えなどを取り上げてもらえるので、いいかもしれませんね。
一方で、STVは徹底的にお客さん目線で北海道で生活する人たちに興味を持ってもらえそうなニュース作りをしています。
どさんこワイドが30年近く北海道の人に愛されている理由がわかりました。
さすが、STVですね。分析をしてみて、あらためてどさんこワイドをなぜ見たくなるか?がわかった気がします。
YouTube配信になると、HTBが上回る
視聴率では圧倒的にSTVの「どさんこワイド」がすごかったのですが、実はYouTubeで数字を比べてみると違います。
HTBはYouTubeのネット配信だと強いのです。
YouTubeチャンネル比較 | HTB | STV |
---|---|---|
チャンネル登録数 | 211,000 | 76,800 |
ニュースの再生回数 | 15,000 | 1,512 |
コメント数 | 11 | 0 |
ご覧の通り、同じニュースネタを比べてみると、再生回数やコメント数が圧倒的に違います。
YouTubeという視点で見ると、力を入れているのは、HTBです。
サムネイルも女性アナウンサーで切り取り、「美女がニュースを紹介」というYouTubeで再生されやすいように徹底しています。
私も収益化している約3,000人のチャンネル登録者のチャンネルを持っているんですが、「サムネイルに美女」はYouTubeで再生される鉄板ネタです。
HTBの人は、かなりYouTubeを研究していると驚かされました。
女性アナウンサーが喜んでいる姿を出したり、冒頭で重要な情報を伝えているのは、YouTubeで再生されやすいポイントです。
もしかしたらHTBのニュースは、YouTubeで再生されやすい二次利用できる作り方を意識しているのではないか?と思いました。
最後に
というわけで、比較は以上です。
軽い気持ちで比べていたら、思った以上に奥が深く、どちらの局も力を入れているのがわかりました。
いつもはSTVの『どさんこワイド』を見てしまいますが、YouTube配信に力を入れているHTBも見逃せませんね。
視聴率争いはSTVの『どさんこワイド』がトップですが、HTBはYouTubeという戦場でトップを狙おうとしているのかもしれません。
私はSTVが好きです。
ハラちゃん、ここまでSTVとHTBの両方を立ててきたのに、そりゃないよ……。
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