北海道は7〜8月にかけて盆踊りの真っ最中!特にお盆シーズンになると、どこも「北海盆踊り」がかかって踊ります。
本州では、聞き慣れない盆踊りソングの北海盆踊り。歴史を調べてみると、下ネタソングから始まったらしいのです。しかもあのザ・ドリフターズも関わっているとのこと。
今回は「北海盆踊り」に興味を持ってもらえるように、「ザックリ」「ぼんやり」「面白く」をテーマに、「北海盆踊りの歌のルーツ」を会話形式で調べてみました。
北海盆踊り(北海盆唄)の歴史
北海盆踊りで使われている「北海盆唄」は、北海道民ではお馴染みの歌!北海道の一部地域を除き、どの地域の盆踊りでもこの曲が使われているので、北海道民にとってお馴染みのお祭りソングです。
この記事を書いているライターのマエちゃんは、本州の神奈川県出身なので、「北海道の盆踊り=北海盆唄」という構図に移住してきてから驚きました。
あと札幌は8月上旬になると、毎日のように盆踊りが複数の広場や公園で開かれています。
夏は北海盆唄1曲で延々とダンスパーティーする道民に驚きました。
この盆踊りに使われている「北海盆唄」とは一体なんなのでしょうか?
地域メディアのまるっと円山を運営しているライターのマエちゃん(神奈川県横浜市出身)とハラちゃん(北海道苫小牧市出身)の二人で、「北海盆唄」を調べてみました。
ぼくは本州の神奈川県横浜市で育ったからよくわからないんだけど、この北海盆踊りでかかっている「北海盆唄」ってどんな歴史があるの?
え?歴史が苦手な私に聞くの?
ハラちゃんは道民だし、「詳しいかな……?」と思って。
じゃあ生粋の親子三代道民である私が、私の人生で知っている北海盆踊りのことを今さっきネットで得た知識と合わせて紹介しましょう。
急に不安になってきた……。
北海盆唄のルーツは、戦前・戦中の北海道の炭鉱で歌われていた歌
北海盆踊りで使われる「北海盆唄」は、元々北海道の炭鉱で働いてた人が、石炭を掘る辛さを紛らわすために歌ってた「ベッチョ踊り」という歌がルーツ【※】だったんだって。
でも、炭鉱なんて男しか働いてないから、まあ卑猥な歌だったらしいよ。
【※】ルーツは諸説ありますが、卑猥な歌詞が含まれていたのは事実です。
ええ!?いきなり思ってもいなかった展開なんだけど。
それを「北海道演歌の父」とも言われる今井篁山(こうざん)さんが、1945年の夏(ちょうど終戦の時期)に、北海道の炭鉱である幾春別(今の三笠市)の盆踊りを訪ねてんだって。
そこの盆踊りで卑猥な歌を聴いたらしい。
炭鉱だけではなく、炭鉱の町の盆踊りでも下ネタの歌がかかっていたの!?
そうだよ!
ベッチョ踊りの「ベッチョ」という言葉が卑猥な意味だからね。
ググってみたら、とんでもない意味が出ててきた!
でも、今井さんは、「この曲を広めたい!」と思ったらしく、卑猥な歌詞の抜いて、いい感じに曲をアレンジしたらしいよ。
そこで生まれたのが、『北海炭坑節』って曲。
よく今井さんは下ネタの歌を聴いて、広めようと思いついたね。
そうだね。まあ曲のメロディーが良かったんじゃないの?
今井篁山(こうざん)さんは今で言うプロデューサーだよね。
なるほどなぁ。
戦後の1945〜1950年代に炭坑節が日本中でブームになる
次はネットで読んで、つまらないからカットしようと思った話なんだけど……。
いや、なんか大事そうだから、ちゃんと聞かせてもらえる?
しょうがないなぁ。
戦後直後の日本は食糧不足とエネルギー不足だったんだって。当時のエネルギーは石油じゃなくて、石炭がメインだったから、人の手で掘ってたんだよね。
だから、「頑張れー!」って意味も込めて、ラジオで炭鉱の人を応援する炭鉱節の歌をかけまくったらしいよ。
それだけ応援されれば嬉しいよね。
それだけじゃないらしいよ!戦後はラジオで炭坑節がかかりまくってたから、日本中で炭坑節のブームが起きたんだって。
おぉー、すごいね!当時のラジオの威力。
すごいよね。で、ついに1951年(昭和26年)の第一回紅白歌合戦では、炭坑節の歌対決が起きたらしい。
すごいじゃん。あの紅白で炭坑節の歌対決があったんだ!?
でも、対決したのは、北九州(三池炭坑節)と福島(常磐炭坑節)だったんだって。
あれ、北海道が入ってない!
北海道は炭鉱の本場なのに残念すぎる!
北海炭坑節が東京に伝わり、レコードとして出される
でも、この戦後の炭鉱節ブームに便乗しようと思ったのが、今井篁山(こうざん)さんだよ。
なんかすごい言い方だね。
今井さんは東京に行って、「北海道にも炭坑節はある!私が見つけた『北海炭坑節』を聴いてくれー」って持ち込んだらしい。
おお!?北海道から東京に持ち込みに行くなんてすごいね。
この持ち込みがうまくいって、『北海炭坑節』は1954年(昭和29年)にレコードデビューしたんだって。
うまく乗ったよね、波に。
だから、言い方に悪意が感じられるよ!
さらに時は流れて、4年後の1958年(昭和33年)。今度は当時めっちゃ人気だった北海道出身の歌手の三橋美智也(みはし みちや)さんに『北海盆唄』に曲名を変えて歌わせたんだって。
これが日本中で大ヒット!
へー、ここで『北海盆唄』が誕生したんだ。
ちなみに三橋美智也(みはし みちや)さんの出身は北海道上磯町(現・北斗市)で、私のおばあちゃんの住んでいた場所と一緒だよ。
函館市の左隣にあるのが北海道上磯町(現・北斗市)。
あら、意外と縁があるね。
ただ、『北海盆唄』のレコードが出たのは1958年だから、これを知っている人は、2023年の現在だと80代以上だよね。
今の日本全国の50〜60代の人に『北海盆唄』を知らしめたのが、とあるお笑い芸人たちだったんだよ。
え?それって誰?
1971年秋 ザ・ドリフターズの番組に北海盆唄の替え歌が採用される
この曲を聴いてみて。
おお!?北海盆唄のメロディーに似てると思ったら、有名なザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』のオープニングテーマじゃないの!
そう!『北海盆唄』は、1971年(昭和46年)10月にザ・ドリフターズが替え歌を歌い、「8時だョ!全員集合」のオープニングテーマとして放送されたんだって。
これで当時の日本中の人に『北海盆唄』が広まったんだよ。
なるほど、当時の『8時だョ!全員集合』は平均視聴率50%以上だったらしいからね。
『北海盆唄』という名前では聞いたことなかったけど、30代のぼくでもこの曲は聞いたことがあるよ。
でも、YouTubeに上がってる『チョットだけヨ!全員集合』という曲は、『北海盆唄』とカトちゃんのエッチなギャグ「ちょっとだけよ」が合体しているんだね。
なんかちょっと複雑……。
でも、北海盆唄の元々の歌は、北海道の炭鉱で歌われていた卑猥な歌だからね。
ザ・ドリフターズのカトちゃんのおかげで、少しだけ本来の形に戻ったとも言えるんじゃない?
意外と替え歌にされた「8時だよ、全員集合」のオープニング曲のほうが、北海盆踊りの炭鉱オリジナル曲『ベッチョ踊り』に忠実だったのか……。
1960年 岩波文庫の『日本民謡集』に北海盆唄が選ばれ、民謡と認められる
でも、『北海盆唄』は今や立派な盆踊りの歌になって、下ネタソングの面影は微塵(みじん)もないね。
あ!元が卑猥だった『北海盆唄』が民謡として権威づけされたのは、岩波文庫のおかげだったらしいよ。
岩波文庫!?本屋さんの中でも、お堅い古典を出している出版社の岩波書店の文庫でしょ?
昭和35年(1960年)に岩波文庫から『日本民謡集』という文庫本が作られたときに、『ソーラン節』とともに『北海盆唄』も入れちゃえー!と偉い人が選んだんだって。
だから、立派な民謡と認められたらしい。
……大出世だな、『北海盆唄』。
しかも、1960年で認められたの、めっちゃ早くない!?
今井篁山(こうざん)さんが1945年にプロデュースしてから、たった15年しか経ってないじゃん!
権威者と権威ある本が認めてくれれば、なる早で本物になれるんだね。
なる早の使い方が間違っている気もするけど、言っていることは間違いないね。
1960年代 北海盆踊りの北海盆唄は消えかける
いやー、それにしても北海道の人は盆踊りが好きだよね。
道民は盆踊り大好きパーティーピーポーだね。
違うよ!北海道の盆踊りは1960年代に1回、人気がなくなったんだよ。
ええ!?ずっと北海盆踊りを踊ってきたんじゃないの?
北海道の1960年代の盆踊り会場は、まだ暗くて、卑猥でエッチな盆踊りの歌をかけてたんだって。
そんなのエッチなダサいディスコじゃん。それじゃ若い人は見向きもしなくなるよね。
だから、旭川の盆踊り保存会(正調北海盆踊保存会)が、盆踊りの法律を作ったんだって。
1. 踊りの会場を従来より照明の明るいものとする。
2. 子どもの参加は夕刻早い時刻にし,子供盆踊りと位置づける。その終了後大人の盆踊りとする。
3. いままで不統一であった踊りを会で統一し,新しい踊りの型を決める。
4. 唄は従来「よされ節」が多かったが,今後は「北海盆唄」を主流にし,歌詞は卑猥なものを排除する。
5. 太鼓の打ち方を統一する。
つまり、今まで無法地帯だったのが、法律化されたってことだね。
なんか荒れ果てた荒野に盆踊り王国(キングダム)ができそうな勢いの説明なんだけど
でも、こういう動きがあったから、『北海盆唄』が今も残っているんだね。
そうそう。2002年(平成14年)には、北海道三笠市(幾春別)では「第1回三笠北海盆おどり」が開かれて、ザ・ドリフターズの高木ブーさんが呼ばれたそうだよ。
へー!すごいじゃん!
でも、どっちかというと、加藤茶さんの方がよかったよね。
みんなも心の中で思ってるかもしれないけど、それは言わないお約束だよ!
まあ高木ブーさんも可愛いんだけどね。
あ!ちなみに、それから10年後。
ついに、2011年の「第10回三笠北海盆おどり」に加藤茶さんが招待されて、トークショーが開かれたんだって。
ええ、カトちゃん、幾春別の炭鉱があった北海道の三笠市にやってきたんだ!
北海道三笠市の鉱山の盆踊りで歌われてたエッチな歌が、
ドリフで一番エッチなギャグを持つカトちゃんに日本中に広められ、
最後にはその加藤茶さんがルーツである北海道三笠市にやってきたなんて……。
ただのエッチだった盆踊りのエピソードが、感動的にすら思えてきたよ。
最初はただの卑猥なエピソードだったのに、ビックリしたね!
最後に
長くなりましたが、『北海盆唄』を調べてみると、思ってた以上に深くて濃い歴史がありました。
確かにルーツはエッチな歌でしたが、ここまで残っているのはその時代、時代で頑張って踊ってきた道民の努力の証!
そう考えると、感慨深いです。
ぼくも全く知りませんでしたが、円山夏祭りの盆踊りを聞いていたら、踊りたくなって、見よう見まねで踊っていました。
いやー、盆踊りって楽しいですね!
神奈川県の横浜市に住んでいたときは踊るのも恥ずかしかったけど、北海道の盆踊りはどこに行っても同じ『北海盆唄』なので、とっても踊りやすいです。
札幌の8月のお盆は毎日盆踊り大会があるから楽しいですね。
盆踊りを楽しみにするなんて、マエちゃんもすっかり道民だね
うわっ!ハラちゃん!気づかない間にすっかりハマってたよ!
北海盆踊り、恐るべし!
■出典・参考:
北海観光節:北海盆唄の誕生
空色コールマイン:『北海盆唄』のルーツ『ベッチョ節』について
NHKアーカイブス:炭坑へ送る夕
NHKアーカイブス:第1回 NHK紅白歌合戦
Wikipedia:北海盆唄 2023年8月13日参考
北海道三笠市:加藤茶さんトークショー 2022年8月18日
コメント
コメント一覧 (2件)
意外な歴史をもつものでビックリしました。
コメントありがとうございます!昔はみんな真面目で、それが残ったのか?と思いますが、意外ととんでもないでルーツから始まるものですね(笑)
徐々にこういう記事も書いていきたいと思います!